夏の夕方、暑いオレンジ色の光輝く太陽が沈みかけている公園…噴水の水は夕日にあたってキラキラと光っている。
タタッ!
「はぁ…はぁ…は…?つ…剛は…?」
愛は愛の元彼金城剛が待っているはずの公園に息を切らして駆け込んできたのだった。
「愛…もう6時40分だよ…」
絵里が時計を見ながら言った。
「金城さん…どこにいるっちゃか…?」
「れいなちゃん、探そ。私そっち行くね!」あさ美とれいなが左右にわかれ駆け出した。
「ふたりとも…待った!」
愛が駆け出す二人をとめ、自分が立っている真ん前をゆっくり指さした。
噴水の一本真っ直ぐにたっていた噴水の水が双葉の半円を描くようにわかれ、その間から愛と正反対の位置にいた「金城剛」が現れた…。
「きてくれたんだね…ありがとう。」
「…ずっと…こんな時間まで待ってたの?」
「待ってたから今いるんじゃん。」
「私が来る保障は…なかったのに…?」
金城はわざと愛から目を反らした。
「本当は何度も何度も諦めて帰ろうとしてた。でももし入れ違ったらとか…もし来てくれたらって考えて…結局ずっと帰れなかった」
「そっか…。」
「愛が…来てくれたってことは…。」
「ごめん…。」
「え…?なんで謝るの?」
「剛とは付き合えない…やり直せない…。」
「やり直せ…ない?好きじゃない…?」
愛は下を向いた。
「剛のこと、大好きだよ。愛してる。」
「…すきなのにイヤなのか?」
「だから…新垣さんのところに戻って…?」
「新垣さん…?彼女は関係ない!」
「あんなに涙流してた。新垣さんは私より、貴方を愛してる。逃すと…でかいよ?」
「新垣さんとのことなんで知ってるんだ?」
「会ったの。昨日…偶然会って喋ったの。」
「新垣さんは…気にしないで大丈夫だから」
「お願い。新垣さんのところへ戻って。」
「関係ないって言ってるだろ!」
「わかった。…戻ってなんて言わない。」
「どうすんだ…?」
「新垣さんのところに戻らないのならもう…もう私たちに関わらないで。私にも…新垣さんにも、絵里にも!みんなに関わらないで」
「なんで…わかってくんないんだよ…。」
「わかってないのは剛だよ…。」
「好きだったら付き合うのが普通だろう?」
「好きな人を困らせて…楽しい?」
「……!?」
「困ってるって言ってんの!」
「え…?困らせてる?いや…あ…ごめん…。そういうつもりは…全然ないんだけど…。」
「じゃあね…剛。」
愛は剛に背を向けた。
「愛先輩!」
金城に背を向けて絵里に行こうとする愛に絵里が心配そうに走って近づいてきた。
「良いんですか?せっかく…。」
「うん。良いのこれで。」
「愛。」
「…亜弥…」
愛と絵里の元に亜弥がゆっくり歩いて来た。
「ごめん…約束…。」
「守ってくれて…ありがと。でも愛、諦める必要…ないんだよ?気にすることないよ?」
「亜弥…」
「好きに理由なんてないって良く言ってたじゃん。付き合うのにも理由はないよ?」
「好きだよ。剛のこと。大好きだよ。」
愛は不敵な笑みを浮かべた。
そして剛に背を向けながら叫んだ。
「剛!」
「ん…?なに?」
「数年後…亜弥と絵里と一緒に、ブラウン管を通して…貴方を待ってる。」
「(成る程…)だって…」
亜弥がサポートするように愛をみた。そして二人は息をあわせて…
「『一方通行の恋』に終わりなんてない。好きに理由なんてないんだから。」
声を揃えてそういった。亜弥の笑顔をみて愛は再び真剣な顔になった。そして…
「私…高橋愛は…貴方をずっといつまでも」(俺…金城剛は、愛のことをいつまでも…)
『好きです。』
金城と愛の声が揃った。
金城の声を聞いた愛は、微笑みながらそのまま金城が立っている方向と逆方向に歩いて行った。金城もまた、愛と逆方向に歩いて行った。
「かっ…こいいー。」
絵里と亜弥は声を揃えて言った。
「愛先輩…やっぱかっこいいです…。」
「愛は…やっぱり愛だ…あんにゃろ。」
「亜弥先輩、あの夢…叶えましょうね!」
「もちのろん♪」
「亜弥さん、絵里さん。」
向こうでじっと待っていたれいなとあさ美が亜弥と絵里の元へ寄ってきた。
「…れいな。」
「かっこよかったっちゃ。二人とも。」
「れいなちゃん。あのね、あの人…三日後なら行けるって。それでも大丈夫?」
「あ…はい!ありがとうございます!」
れいなが微笑んだ姿を見て、あさ美は心の中で愛とれいなに語りかけた。
(愛ちゃん、れいなちゃん…よかったね。かっこいいよ。どんなことをしても…そこに愛する人がいれば、なによりも叶えたい夢があれば、きっと人は…強くなれるんだよね!)
愛と金城は結ばれた…それは恋人としてではなく、恋より友情よりも大切な『強い絆』。夢のために踏み出す愛…
それを見守る金城。二人は永遠に惹かれあう…。
そんな中…あの人に会えることになったれいなの恋は…急展開を迎える。
|