「もぉー宿題やだぁー。数学ありえないし」 「ありえなくない!私教えてあげるから。」 「やっさしーあさ美。私絶対教えないね。」 「愛ちゃん…それ数学苦手だからでしょ?」 「ふふっ…それもあるけど。絵里にだし?」 「愛先輩、それちょっと酷くないですか?」 「もう先輩呼ばわりしないでいいってば。」 「でも愛ちゃん先輩に代わりないじゃん?」 「まぁ…あさ美よりひとつ上だけどさ…。」 「それに絵里より二個も上ですもんねー。」 「…まーね。でも今は同じ学年じゃんか。」 「いろいろあったもんね。愛ちゃんも私も」 夏休みに入って二週間目の7月末、 愛・絵里・あさ美の三人は絵里の家でぐだくだ喋りながら宿題をしていた。 「今日は?れいなちゃんこないの?」 「れいな?もうすぐ来ると思う。さっきで今向かってるってメールきてた。」 ピンポーン! 「あっ…きたかな?はいっていいよぉ!」 「あっつーい!絵里ぃ?愛ぃ?久しぶりー」 「亜弥先輩!?」 「そんなに驚かなくてもいいじゃん…!」 「突然こられたらビックリするのが普通…」 「…そう?今までもこうしてたじゃん?」 「これだから亜弥は変わってるの…。」 「ちょっと愛…それどういう意味!?」 ピンポーン! 「あ…今度こそきたかな?」 「なにその言い方。人を邪魔扱いですか?」 「こんにちにゃー!」 「きたきた♪れいなちゃんいらっしゃい♪」 「…え?」 リビングに入った瞬間れいなは固まった。 視界に入ったのは亜弥だった。 「亜弥さん!?お久しぶりっちゃ…。」 「れ…れいなちゃん!?うっわー久しぶり」 「れいなを…覚えててくれたとぉ?」 「忘れるわけないじゃん!」 「良かったっちゃ。ありがとです。」 「元気にしてた?」 「はい。亜弥さんも元気そうですね…。」 「愛たちと一緒の高校だったんだー♪」 (亜弥さん、ひとりっちゃか…) れいなが悲しそうな顔をしているのを見かねた愛は小声で亜弥に話し掛けた。 (「亜弥あの人は?一緒じゃない?」) (「へ?あのひ…」) 愛は真顔で亜弥を睨んだ。亜弥はその顔を愛の言いたいことがみてわかった顔をした。 (「あーえーあー。連れて来れなかった」) (「お願い、亜弥…連れて来て?」) (「でもくるかな?あの子頑固だし…。」) (「だから亜弥に頼んでるの。あの子亜弥の言うことなら聞くんだから。」) 「了解!ちょっと待っててー明日になるかもしれないけど頑張ってみる♪」 「わ!バカ、声でかい!」 「亜弥さん!」 ビクッ。 愛と亜弥はれいなの声に驚き焦った。 「お願いします…会いたいっちゃ!」 れいなは亜弥に頭をさげた。 「戻ってきて欲しいと…謝りたいっちゃ…れいなが悪かったですって…お願いします。」 「れいなちゃん…頭あげて?私…れいなちゃんに頭下げられるほど偉い人じゃないから…。 それにれいなちゃんは悪くないよ…。」 「会いたいんです…会わないと夢が…。」 れいなはそれでも亜弥に頭をさげた。 亜弥はそんなれいなをみていてもたってもいられない感情が込み上げてきた。 「れいなちゃんの夢はうちらの夢だもんね。あのことも話さなきゃだし、行ってくる!」 亜弥は再び絵里の家を駆け出していった。 「良かったね。れいなちゃん。絶対亜弥が連れてくると思うから安心していいよ。」 「ありがとうございます。」 「もう6時じゃん。お腹へったー。」 「6時?夕方の6時…絵里、今日何曜日?」 「日曜日だけど…どうかしたの?あさ美。」 「日曜日の…夕方…6時…?」 愛はその場に立ち尽くし震えていた。 「…愛ちゃん!」 今日日曜日は…午後5時に公園で金城剛が待ってる予定だった。 「早く行かなきゃ!金城君帰っちゃうよ!」 「もう遅い…1時間もすぎてる…きっと…」 (行かせなきゃ…ホントに縁が切れちゃう) ピルルルルッ。 「もしもし。鈴木ですけど…あさ美さん?」 「鈴木くん!は…はい。え?ホントですか?わかりました!すぐ行かせます。」 プチッ。 「愛ちゃん!まだ金城くん公園いるって!」 「私は…行かない。」 「引きずらない?もう諦めちゃうの?」 「金城さんを…好きじゃないんですか?」 「だって振ったのは私だもん!私が一方的に…意見も聞かずに、振ったんだもん…。」 「…っ!愛先輩!」 「絵里…ごめんね…臆病な先輩で。」 「亜弥先輩との『約束』破る気ですか!?」 「………!?」 「頑張ろう!って…お互い辛いけど信じてればいつか叶うから。 振られたことを後悔させてやろうって。約束したじゃないですか! 願いが通じたんですよ?」 バンッ。 愛はドアを勢いよくあけ、走って行った。 「うちらも行くっちゃね!」 「うん。行こう、二人とも。」 れいなたちは愛を追って走りだした。 愛と亜弥の約束…みんなの夢…亜弥が連れてくるあの人… 少しずつ謎はとけていくはず…愛は金城と結びつけるのか…?