(佐々木のバカ…れいなには忙しいって言っとっちゃくせにあの人と遊んでるけんね…)
佐々木の学校からの帰り、れいなは半泣きしながら家に帰ろうとしていた。
「あっれー?れいなちゃんじゃん?」
「…にゃ?あ…絵里さん。こんにちは。」
「さん付け良いって言ってるじゃーん?どうかした?目…赤いよ?」
れいなは黙ってしまった。
「…絵里ん家にくる?一人暮しだから誰もいないし…おいで。」
「にゃーぃ。」
れいなと絵里は絵里の家に向かった。
「座って。今日カレー作ってんだ♪さっき材料足りなくて買ってきたの。一緒に食べよ」
「いいっちゃか?悪いっちゃ…。」
「大歓迎♪一日じゃ食べ切れないし♪」
絵里はそういって台所に向かった。れいなはその間、顔に冷やしたタオルを乗せながら寝にはいってしまった。
「れいなー!起きなさい!ご飯出来たよ!」
「ふにゃ…れーな寝てた?ごめんなさい…」
「良いよ♪泣き疲れちゃったんだね(笑)」
「にゃに?その笑み。」
「なんでもなーい♪さ、ご飯食べよ♪」
カチャッ…カチャッ
「へー彼氏に女友達?そんなことで喧嘩?」
「…そんなことやない…です」
「ん?なにが?」
「別れる…もううちらは終わりやけん…。」
「そんな…ただの女友達でしょ?れいなにだって男友達のひとりやふたりいるでしょ?」
れいなは首を振りカレーを食べていた手を止めスプーンを置いた。
「久住っていう女の子が佐々木にタオル渡したとき…佐々木…れいなと付き合ってから一度も…一度も見せんくなった笑顔見せてた…それで佐々木の気持ち…」
(れいなに向いてないってわかったっちゃ)
「別れても後悔しない?」
「れいなに恋人なんて…無理な話だったと」
「なんで?れいなモテるじゃない。」
「罪人だから。」
れいなは絵里の目を見つめた。
「罪人…?」
「家族をばらばらにしたんはれいなっちゃ…あん時頼まなければ…お姉ちゃんは…。れいなの実の姉も…れいなに愛想尽きていなくなったと。きっとそうっちゃ!」
「それは絶対ない!」
絵里はれいなが怒鳴っていたより大きな声で叫んだ。
「……さんはれいなのお姉さんはそんなこと有り得ない…れいなを嫌いになるわけない」
「なんでそんなことが言えるとぉ?絵里はなんも知らんっちゃ!れいなの気持ちなんて」
「誰のお陰であの子と会えてると思う?」
ドクンッ!
「あ…」
れいなは目を見開いていた。
「1番悲しんでるのはあの人だよ。あの事件のときれいなを怒った?誰かのせいにした?してないよね?あの人は…絶対違うのに自分のせいにしたんだよ…れいなのことかばってたじゃん!なのに…裏切り者にするの?」
「ご……め……んな…さい…。」
れいなの目から涙がこぼれ体は震えていた。
絵里はその姿を見て目をつぶった。
「トキって…残酷だよね。」
「…………」
「同じトキを生きてるのにひとりひとり違う状況で違う環境がある。一秒なにかやってしまうともう取り戻すことが出来ない絶え間無いトキ…。一瞬が運命を変える…いいほうにも悪いほうにも変わっていく…。」
「…かけがえのないのがトキっちゃ…。」
「一瞬が運命を変える。」
絵里はれいなの目をじっと見つめ言葉を強調するかのように繰り返した。
「だったらあの子の運命を取り戻せるんじゃないかな?良い運命へと…。」
「…あ…!」
「頑張ろ♪絵里も協力する。」
れいなは頷いた。
「でも佐々木の想いは…」
「…ね、れいな。今目を開けてる状態で男の人を思い浮かべて。その後目を閉じてみて…そのとき誰を思い浮かぶ?」
れいなは絵里の言うとおりにやってみた。
「浮かんだ人…それがれいなの好きな人。」
「………え………」
れいなは驚いた顔になった。
「誰か浮かんだ?」
「浮かんだけど…ありえにゃい…。」
「意外な人だったんだ?」
「…うん…。」
カチッ。
れいなはしばらく考えて携帯を開いた。
「もう9時か…。んにゃ?9時ぃ!?」
「れいな、どうしたの?」
「帰らんと!怒られるっちゃ!絵里さん今日はありがとうございました。」
れいなは出していたものを鞄にしまいドタバタと玄関に向かった。
「送ろうか?夜…危ないし。」
「大丈夫、すぐ近くっちゃから。ありがとうございました。ご飯美味しかったとぉ。」
「彼氏のことちゃんと考えなよ。後悔したって無駄なだけだからね?」
「はい♪んじゃまた来週ー!」
れいなは帰って行った。
あの子・あの人?れいなが悩むあの出来事とは?
れいなのまぶたの上に浮かんだ人物とは?
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